今日は嬉しい楽しい日曜日。京子ちゃんと花、三人で買い物に出かけます!
女の子の友達と二人以上で買い物なんて何時ぶりだろう…………! 最近はリョーコちゃんと綾香ちゃんと三人で、ってのはなかったからなぁ。
凄く緊張するよ! なんか危ないスイッチ入りそうだよ!
うぅ、女、死ぬ気でショッピングを楽しみたいと思います!
普段は着ない(って言うか着させて貰えないんだよね、制服として)スカートを少し弄くりながら、私は待ち合わせ場所で一人突っ立っていた。
待ち合わせ時刻にはまだ五分ある。その間、私は今日のプランを頭で立てる事にする。
まず、お母さんから頼まれたお使いを済ませるのが先だろう。
実は出かける前、外に出るならとフィアーラというオリジナルフレグランスのお店でお母さんオリジナルの香水を貰ってきて欲しいと言われたのだ。
オリジナルフレグランス、なのにお母さんのがあるとは。……侮り難し、設定効果。
……ああ、そう言えば私の香水(向こうでリョーコちゃんと二人で作ったものだ。レシピは頭に入っている)も無くなるから、持ってきたアトマイザーに作って入れてもらおう。
よし、今日は京子ちゃんと花を誘ってフィアーラに行って、それからケーキバイキングに行って、少し買い物をして帰ろう。うん、決定。
頭の中の計画に頷いていると、人混みの方から声が聞こえた。
向いてみれば、私服の花と京子ちゃんの姿。
「こんにちは、ちゃん」
「早いわね、」
「へへ、久しぶりの友達とのお出かけだからつい」
久しぶりでワクワクしちゃったんだよね。まぁそうじゃなくても私、集合時間前に集合場所に行っちゃうタイプなんだけど。
頬を掻きながら二人の私服を見る。
花は赤いチュニックの上に白いレースのカーディガンを着て、ジーンズを穿いている。対する京子ちゃんは、デニム地のフリルスカートにパステルカラーの上着。インナーは文字がプリントされた白いTシャツという姿。
どっちも可愛いと思う。あ、花の場合は格好いい、かな。
セピアカラーに纏めた私と並んで立つと、私がメチャクチャ浮いて見えるという罠。
ああっ、どうしてセピアにしたんだろう私……!
ちょっと項垂れていたら、じろじろと花が私を見ていることに気付いた。
「……花?」
「ねぇ、。あんたさ、下着とかどうしてるの?」
「へ?」
いきなり何を言い出すんだろう花は。
「お金貰って適当に買ってるけど……それが?」
首を傾げて問えば、がしり、と右腕を掴まれる。
思ったよりもがっしりと掴まれていて解くに解けない状態だ。いや、多分そうじゃなくても解けないと思うけど。
だって今までこうやって腕をがっしり掴むのは、リョーコちゃんだけだったから。
振り解く気が全く起きないのだ。困ったことに。
そしてそのままの体勢で花は京子ちゃんの方に向き、宣言する。
「京子、先に買い物行くわよ」
「えええっ!?」
初っぱなから計画変更ですかーっ!?
っていうか何でそんな鬼気迫るような迫力なのさ、花!
ぐいぐい引っ張られて連れてこられたのは……その、ら、ランジェリーショップ…………でした。
こういう華やかって言うかちゃんとしたところにはいるのは初めてで、緊張します。
っていうか私何でこんな所に連れてこられたわけ?
「あんた身体に合ってないのよ、それ」
中に引っ張り込まれてからの花の第一声がそれ。ついでに指さしてくださいました、私の胸を。
指さされた場所に視線を落として首を傾げる。
身体に合ってない、の? これ。
「だからちゃんと測って買うわよ」
…………え、測って買うものだったの? 下着って。
なんてぼーっとしてる間にあれよあれよと測られ下着をご購入。何が起こったかなんて私が一番知りたいほどの手際よさだった。
店員さんもそうだけど、花の手際がよかったんだよ。慣れてるって感じ。
京子ちゃんも手伝ってくれたんだけど、お陰で結構……可愛い感じのを買うことになりました。
お陰で私、今度から学校ではサラシ付けなきゃいけないかもしれないと思いました。
今まで(知らなかった所為なのだけど)締め付けていたせいか、ちょっと頼りなく感じるのだ。でもこれからこうなら慣れなきゃいけないかな……?
「と、兎に角、ありがとう、花」
「別に。私が気になっただけだしね」
それより次はケーキバイキング?
そう言う花に、ここまで来たら香水より先にケーキの美味しい甘い匂いを堪能してしまおう、と言う欲求で私は頷いた。
次の目的地、駅前のケーキバイキングに向かって歩き始める。
京子ちゃんと花の二人と並んで歩いていると、視線が集まっているのが解った。
二人とも美少女だから当たり前なんだけど、隣にいる私にまで視線が来るのは勘弁して欲しい。なんていうか、アイドルと歩いている一般人の気分だ。
…………あれっ、実際この視線と状況ってそんな感じなのかな?
少し首を傾げつつ歩いていけば、目の前に五人のお兄さん達が現れた。……うん、現れた。
これはあれだ、某RPGみたいに「スライムA、B、C、D、Eが現れた!」って感じ。
でも今はレベル上げの最中でもダンジョンを歩いているわけでもなくて、イベント中なのだ。正直出てきて欲しくなかった。
すいませーん、誰かホーリーボトル持ってませんかー?
「君達今暇?」
「オレ等と遊ぼーよ」
「こっちの奢りでいいからさー」
微妙な笑顔(だってニヤニヤとニコニコの中間なんだよ。下心が見えそうなんだよ)を浮かべてお兄さん達はこっちに近付いてきました。
駄目だ、現実逃避は駄目だ。ナンパ野郎から京子ちゃんと花を守らねば!
目の前にいる五人は高校生ぐらい、だと思う。金髪に染めている人がいるけど、正直似合ってない。
髪の毛を染めると傷んで黒にならないんだぞ!? 黒い髪の毛なんて綺麗なんだから大事にしろよ!
心の中でツッコミながら私はお兄さん達を睨め上げた(と私は思う。相手がどう取ったか解らないけど)。
「私達、用事があるのでナンパはお断りです」
「いいじゃんか。用事なんか後回しでさ」
よくないよ! これから女子三人水入らずでケーキ食べるんだから!
更に言葉を続けようとすれば、ぐい、と腕を引かれる。
視線を向けてみれば、腕を引いたのは花。
「ちょっと、。いちいち相手してても時間の無駄だから行くよ」
おおっ、さっすが花! 対応を心得てる!
感心しながらも頷き、花と京子ちゃんの後に続いて行こうとすれば、ぐるりと囲まれる。
その様子を見て花は顔を顰め、京子ちゃんはお兄さん達から離れるように身体を縮こまらせた。
…………ぴ、ピンチ?
どうしよう、どうにかして花と京子ちゃんを逃がさないと。
「死ぬ気で逃がせ」
リボーンの声が聞こえた。
遠くから、けれど私にだけはしっかりと。気のせい、かもしれないけれど。
額に灼熱、けれどそこからどんどんと冷たくなっていく。撃たれたのだと解った。
黒い服と全身を包む温かい温もりと紅い色が見えた気がした。
そうして、私は私の身体の主導権を失う。いつもの(と言っても四回目の)死ぬ気タイムだ。
「……京子ちゃん、花、先にケーキ屋に行ってて」
私の身体はそれだけ言うと、近くにいたお兄さんAを蹴った。
「てめぇっ!」
そこからはご想像にお任せします。
と言っても阿鼻叫喚になったわけじゃないのだ。そこまでは私、出来ませんって。
京子ちゃんと花が走って見えなくなったのを見計らい、五人のお兄さん達と死ぬ気の鬼ごっこ。
何とか途中で撒いて、ケーキ屋前で待っていた京子ちゃんと花と合流。と、同時に死ぬ気タイムの終了。
ケーキ屋に入った私達は、美味しいケーキを食べましたとさ。
…………何個かリボーンとお母さんにお土産として買っていこうっと。
面白かったら猫を一押し!