どうも、風邪が完治しましたです!
 体育祭から暫く、微熱続きで完治には遠かったのですが、十月になって漸く微熱も治りました。
 …………と、いうか、微熱が出てるときに何故来るかなぁ、殺され屋モレッティ
 何故そんな時に殺され屋を呼ぶかなぁ、家庭教師リボーン
 お陰でモレッティさん、一発退場喰らっちゃったよ。私に。安眠妨害も甚だしいって。
 仕方ないよね? 熱が出て、普段より攻撃的になってる私の部屋に、空砲撃ってから素早く死んだドロボウ役として入り込んだんだもん(空砲を撃ってから入ったのは私の就寝中の警戒心の所為、らしい)。
 発砲音で起こされれば、そりゃあ安眠妨害にもなるよ。しかも早朝。
 窓から思いっきり放り出されても、そりゃあ文句、言えないよねぇ?
 それにしても、微熱、かなり続いたなぁ。やっぱりシャマルに処方して貰えばよかったのかな。
「十月に入っても十日ちょっと引き摺ったしなぁ」
 溜息混じりに呟きながら校門を潜る。ちなみに土曜日の今日、何故学校に来ているかといえば答えは一つ。…………補習なのです、補習。
 ああもうホント、誰かに話すような感じで現実逃避してないとやってらんないよ…………。
「………………あれ?」
 生徒玄関に向かっていたら、とても目立つアッシュグレーの髪と黒髪が目に飛び込んできた。もちろん、獄寺君と山本だ。
 うん、一言言わせて貰うと、生徒玄関近くで喧嘩しないで二人とも。って言うか、山本は部活じゃないの……?
「ちょ、ちょっと二人とも、何してんの!」
 慌てて駆け寄ると、しまった! って顔でこっちを見る二人。
「十代目!」
!」
「喧嘩なんてしないでよね! 何があったか知らないけど」
 二人の目の前で腰に手を当てて言えば、二人とも頬を掻いてくるり、とお互い背を向け合う。
 私に喧嘩してたのがバレたの、そんなに気まずいのかな。
 ………………否、私はこれによく似た「シーン」を知っているはずだ。
「さて、部活部活っと」
「十代目、補習頑張ってくださいね」
「…………ありがとう獄寺君」
 出来れば言葉にして欲しくなかったなぁ、補習。
 とぼとぼと二人と別れ、教室に向かいながら私は考える。
 獄寺君と山本の喧嘩。変な態度。その原因を私は…………知っている。でも思い出せない。
「何だったっけ……」
 そう言えば、昨日からハルやランボ、ビアンキが変だ。ついでにお母さんも。ああいや、お母さんはいつものことだっけ。
 呻りながら廊下を歩いていた所為か、ちょっとクラスを通り過ぎてしまう。危ない危ない。
 鞄を席において補習の準備をしていると、ふと思い出した。
「……あ、そうだ、誕生日だ」
 これによってツナは散々な目に遭うんだった。忘れてたら私も同じ目に…………うわ、ぞっとする。
 思い出せたことに安堵していると、目の前、つまり私が鞄を掛けた机の上にいつの間にかリボーンが立っていた。ひぃ。
、みんなは誕生会の準備をしてるんだぞ。お前に伝えるの、忘れてたからな」
「え、あ、そうなんだ」
 やっぱり、と思いながら、私はリボーンを見る。
「…………もうすぐ補習、始まるから退いて欲しいんだけど」
「お前、虚しい奴だよな。何が楽しくて休みに学校来てんだ」
「だから補習があるから仕方なくだよ」
「サボる甲斐性ぐらい持て」
「お前それでも家庭教師かよ!」
 何生徒にサボタージュを勧めてるのさ! 信じらんないっての!
 元々非常識だとは常々思ってたけどね。だからって勧めるなよ、サボりを……。
「硬すぎなんだ、お前は。柔軟な思考、持ってんのか?」
「大きなお世話だよ。真面目で何が悪いの」
 やれやれ、と肩を竦め、リボーンは机から飛び降りると教室から出て行った。
 真面目さで自分の首を絞めるなよ、と言う言葉を残して。


























 補習も終わり、帰りに商店街でプレゼントも購入。さあ、万全の体制でいざ帰宅!
 気合いを入れて扉を開けば、途端に響くクラッカーの音。
 ちなみにクラッカーは人に向けて撃ってはいけません! よい子のみんな、間違わないように!…………よい子のみんな、って誰。
「誕生日、おめでとー!」
 お母さん、山本、ビアンキ、ハル……とついでにランボの言葉に足元を見れば、しっかりちゃっかりいつの間にか、黒衣の赤ん坊がいた。少なくとも、商店街を出るまではいなかった。断言できる。
「サンキュー」
 軽くそう言ってすたすたと軽く入っていくリボーンに続いて、身体に掛かった紙テープを巻き取りながら私も玄関に入る。
 ああ、あとで紙吹雪の掃除しないと。
「今日はオレのために集まってくれて感謝してるぞ」
 誕生会の主賓らしく…………まあいつものことでもあるけれど、堂々としてリボーンが言う。
「オレもこれで一歳だぞ」
「嘘吐けッ!」
 激しく突っ込んでしまった。
 だってどう考えても一歳だなんて思えない。もし仮にそうだとしても、私は認めない。認めたくないって言うのが本音だけれど。
「嘘じゃないもん」
「キャラ変えたーっ!?」
「まぁまぁ、。とりあえず着替えてらっしゃいな。リビングでパーティするからね」
「…………解った」
 一家の影の大黒柱であるお母さんにそう言われたら、大人しく従うしかない。と言うか、制服でパーティ参加ってちょっと嫌だ。
 溜息吐きつつ自分の部屋に行き、服を着替えると早速リビングへ向かう。
 きっと沢山料理作ってあるんだろうなぁ、なんて思いながら階段を下りていたら、ハルの素っ頓狂な声が飛んできた。
「はひっ? 何でケーキが二つあるんですかっ?」
 …………ん? ケーキが二つ?
 何でケーキが二つなんだろう。リボーンが二種類食べたい、とでも言ったのだろうか。
「どうしたの? ハル」
 リビングに入れば、確かにテーブルの上にあるのは二つのケーキ。でも同じ生クリームのケーキに見えるのは何故だろう。
「あ、さん! 見てください、ケーキが二つもあるんです。今日はリボーンちゃん一人のパーティなのに」
「だよなぁ。坊主一人にケーキ二つは、なぁ」
 いや、リボーンやお母さんならやりかねない。
 なんて思ってたら、お母さんが料理を持ってやって来た。手早くテーブルの上に料理を並べつつ、
「だって明日も誕生日パーティ開くんなら、一緒にやってしまおうって思って」
 と言ってくださった。
 そうか、明日も誕生会があるんだ。…………誰の?
「お母さん、誰の誕生会?」
…………あなたのに決まってるでしょう」
 こきり、と首を傾げた私の頭に手を伸ばし、デコピンをお見舞いしつつ呆れたように言うお母さんは、どっからどう見ても嘘を吐いているように見えなかった。
 つまり。
 明日は私の誕生日、と言うことで。
「…………ぇ、」
「ええーっ!?」
 驚きの声を上げようとしたら、先に声を上げられてしまった。約三名に。
 約三名の内訳は、山本、ハル、ビアンキである。
「何で教えてくれなかったんですか、さん!」
「水臭いじゃねーか!」
「それじゃあのお祝いも兼ねないとね」
 そう言ってくれるのは嬉しい。嬉しいのだけど。
「私、明日誕生日だっけ?」
 ていうか、私、何時が誕生日だったっけ。
 自分の誕生日を覚えていないって、どれだけ間抜けなんだろう、私。
 それも、毎年。自分の記憶力の悪さに泣けてくるよ。
 がっくりと項垂れていると、頭に手が乗せられる。
「兎に角、今日はケーキと料理を食べましょう? プレゼントは明日、ね?」
「お母さん……」
 頷くと、椅子に促され、盛大なパーティが始まった。
 …………うん、まあ、なんだ。
「ご、獄寺君、大丈夫…………?」
 部屋の隅に蹲ってお腹を押さえている獄寺君に声を掛ける。ビアンキがいるから大変そうだ。
「じゅ、十代目…………オレのことは、お気になさら……ず」
 言葉が終わると同時に倒れる獄寺君。こんな不吉な誕生会嫌だ!
「ってコトでビアンキ! ゴーグル付けてっ!」
「どういうことか解らないんだけど」
「獄寺君が倒れないようにする為だからっ!」
 獄寺君の為、と言うことで納得してくれたのか、ビアンキはゴーグルを掛けてくれる。これでひとまず、獄寺君がこれ以上ダメージを受けることはないだろう。
 安堵の息を吐いていたら、リボーンがビシッ、と私を指さす。
はついでだからな。今日の主役はオレだぞ」
「はいはい、解ってますって」
 肩を竦めながら言葉を返せば、いつの間にかリボーンの隣に置かれている巨大な…………得点板?
「リボーンさん、これは、一体…………?」
 思わず敬語になってしまったが、まさか。
「ボンゴリアン・バースデイパーティ用の得点板だぞ。ボンゴレジャッジボードだ」
 一気に血の気が下がった気がした。
 恐怖のパーティ、「ボンゴリアン・バースデイパーティ」。
 それは、ボンゴレファミリー内で奇数歳の誕生日に行われる。誕生日を迎える主役が、参加者のプレゼントや出し物に得点を付け、最下位が殺されるという、伝説のパーティ。
 ……………………伝説であるが故に、このパーティが実際にあるのかリボーンの発案なのか判断できない。いやもうマジで。
 ちなみに、最高得点者は主役から豪華プレゼントがもらえるとか。
 リボーンの説明も上の空、頭の中で漫画の中と相違がないか探してみるも、無駄に終わった。
 八十点という高得点を取った、山本が持ってきてくれたお寿司やお母さんの料理、ケーキを食べながら、次は誰が出し物若しくはプレゼントを出すか、と牽制し合っている(ように見える)。
「はいはい! ハルはリボーンちゃんに白いスーツを作ってきました!」
 そう言ってハルが取り出したのは。
「ターゲット柄です」
「狙われまくりだから!」
「はひ……そう言われてみれば……」
 確かに白いけど。確かに白いけど! 黒字に白いターゲット柄よりもいいかもしれないけど!
 何故にターゲット柄…………? やっぱりヒットマンだから…………?
「サンキュー、ハル! オレはこういうスリリングな服は好きだぞ」
 ……流石イタリアから来たヒットマン。複数の愛人を持つ男。女性の扱いが上手いというか。
「って八十五点!? 高得点じゃん!」
「やりましたよ、さん!」
 違う、女性の扱いが上手いんじゃなくて、甘いんだ。女性に。
 がっくり肩を落としつつ、お母さんが作ってくれた料理をつついていると、次なる挑戦者が立ち上がった。
「私は本場イタリアのピザ生地投げでリボーンの誕生日を祝うわ」
 には明日、プレゼントを用意してあげる。
 そう言って微笑んだビアンキに笑みを返し、私はそろり、と腰を浮かす。もちろん、いつでも逃げれるように、だ。
 ピザを投げ、回し始めるビアンキに対し、少しずつ恐怖が湧いてくる。
 だって私は覚えているのだ。漫画の内容を。衝撃的すぎて。
 段々と大きくなる生地は、薄く広がり――――――――周囲のものをスパスパと切っていく。
「ややや、やっぱり切れてるーっ!」
 生地を見ながら生地から逃げる。と、生地が一つの置物を切りそうに。
「っ、それは駄目!」
 慌てて置物を確保。と同時に、背中に冷たい感覚と熱い感覚が襲った。
っ!」
 慌てたような数人の声も聞こえる。
 足が縺れて床に倒れると、痛みが床に打ち付けた部分と背中からやってくる。ああ、これは切れたな、背中。
、大丈夫!?」
「うん、大丈夫だよ。お父さんの置物」
「そっちじゃないでしょ! 怪我が……!」
 お母さんやビアンキ、ハルや山本や獄寺君の取り乱しっぷりに、私は逆に冷静になってしまう。
 頬を掻きながら、背中からやってくる痛みに耐えつつ、笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、これぐらい」
「でもさん、血が……!」
、早く病院に行った方がいいぜ!」
「十代目のお母様! 救急車呼びますか!?」
「私が運転していった方が早いわ! ビアンキちゃん、みんなをお願いね」
 私を立たせると、お母さんは玄関の方へと私を引っ張っていく。
 なんだか凄く心苦しい。せっかくのパーティを台無しにしちゃったわけだし。
「リボーン、私が座ってた椅子の下にある箱、プレゼント! 獄寺君と私の連名だから!」
 それだけ言うと、私は普段使われることが殆ど無い自家用車(軽自動車だ)に乗せられ、病院へと連れて行かれた。
 ………………何針か縫われました。名誉の負傷です。帰ってきたときにでも褒めるなり怒るなりしてください、マイファザー。








面白かったら猫を一押し!