問題1。爆睡しているスタンを目の前にしてとリオンはどうしたか?










 答え、盛大に呆れて溜息を吐いた。










 問題2。爆睡しているスタンを起こすためにが取った行動とは?










 答え、を取りに部屋へと戻った。










 問題3。を取って戻ってきた後のの行動は?










 答え、
「じゃあマリー、しっかりを持っててくれよ?」
「ああ、解った」
 をマリーに持たせて一人だけ部屋から抜け出した。
 扉を開けて廊下に出、しっかり扉を閉めてからダッシュで走り去る音が部屋の中にまで聞こえてきた。
「え、どうして出ていくのよ?」
《私の声、どの波長にしてもに聴こえるから》
 苦笑するの声にルーティが首を傾げる。
「どういうこと?」
《私、声の波長を操作して、特定の人物のみに聞かせることができるの。今は誰にでも聞こえるようにしているのよ》
 こういった事は普通のソーディアンにはできない。にのみ与えられた機能というか、ハロルド博士には実現できなかった技術というか。
 何者だ、の兄。
 そんなことはほぼ誰も気を向けず、ただ納得する。
「凄いんですね」
《えへへっ》
 照れたような声の後、は不意に黙った。そして。
「っ!」
「うわっ!」
 いきなりリオンが耳を塞ぎ、スタンが飛び起きた。
 スタンの様子で、恐らくスタンのみにしか聞こえない波長でが何かしたのは解る。だがそれで何故リオンが耳を塞ぐのか。
 眉を寄せつつ耳を塞いだままリオンがを見る。
「おい、僕にも聞こえたぞ」
《えっ、どうして……?》
 が驚いたように声を上げる。
 それと同時に扉が開き、耳を押さえながらが入ってきた。
……大きすぎ。ぼくにまで被害が…………」
《あー……ごめんなさい。大きすぎて私に波長が近い人には音が漏れちゃったみたい》
 の言葉で納得したのか、が謝る。
 どうかしたのかと問うに、フィリアが事細かに教えてくれる。それで納得したのかそうでないのか、ふぅん、と呟いただけでマリーからを受け取り、背中の鞘に収める。
 スタンも起きたところで準備を整え、宿をチェックアウトし、一路ダリルシェイドを目指して再び歩き出した。

























 王城へと連れてこられた達は今、謁見の間で王の前に跪いている。
 リオンが王に事の次第を説明している間、は欠伸を堪えるのに躍起になっていた。
「時に……」
 王がふ、とを見る。
よ。また来てくれたのだな?」
「いえ来る予定は全くありませんでしたが」
「やはりこの国の兵士になりたいのじゃな?」
「いいえ全然」
「むぅ、兵士では納得いかんのか。ならば客員剣士に!」
「いや役職が問題なんじゃなくて」
「えーい、こうなれば七将軍改め八将軍じゃ!」
「将軍だけは止めてください」
「やはり客員剣士がいいと? 自分を過小評価してはならんぞ? だが客員剣士ならそれもまた実力がなければ着けぬ役職じゃな」
「ていうかこの国の兵士類に名を連ねるつもりはないんですが」
「誰かに客員剣士の制服を!」
「人の話を聞け!」
「おい貴様! 王の前だぞ?!」
 の暴言にリオンが立ち上がり、咎める。
 それに眉を顰め、王を指さしつつも立ち上がる。
「だったらまず話を聞くように言ってくれ!」
「そういう問題じゃないだろう!」
「ぼくの意見を聞かないんだ、そういう問題だ!」
『二人とも、落ち着こうよ……』
 シャルティエの声に黙り、とリオンはもう一度跪く。
 王は漸く元の調子に戻ったのか、それとも先程も平常心だったのか、何事もなかったかのように玉座に座っている。
 そんな王を見上げ、リオンが問う。
「陛下、この者をご存じで?」
「うむ。数日前に現れた盗賊を一人で倒し、我が前にやってきたのだ」
 客員剣士であるお前が別の任で離れていたときだった故に大いに助かった。
 そう言っての方に視線を向ける王。だがその視線から逃れようとは顔を背ける。
「その時も今のように兵士にならぬかと申したのだが……頑固でな」
 王の言葉にどちらがだ、と小さく呟いたをリオンは肘で突く。
「おお、そうじゃ」
 唐突に王がそう言って手を打った。
 眉を顰める周りの者。王はと言えば一人でその案に頷いている。
よ、兵士にならぬと言うならこの一度だけ。神の眼を取り戻すという任だけでも手伝ってはくれぬか?」
 きょとん、と言われたことをすぐに理解できていないのか、幼い表情をしたかと思えば、すぐに不敵な笑みを浮かべ、は「御意に」と王の言葉に頷いた。
 一礼し謁見の間の扉をくぐり抜け広い廊下へと出ると、ヒューゴが達の前に、正しくはの前に立った。
「久しぶりだね、君」
「そう、ですね? ヒューゴ・ジルクリストさん」
 何度目でしたっけ?
 そう微笑みすら浮かべ聞くと、同じく笑みを浮かべ答えるヒューゴ。
「確か三度目だったかな」
「もうそんなになりますか?」
 空気は穏やか、二人の表情も穏やか。それなのにそこは、感じる者は感じる氷点下の空気を漂わせていた。
「ヒューゴ様、知り合いですか?」
「ああ。……昔、君が小さい頃に一度、そして最近の年齢になって一度、今以外に会っているのだよ」
 にこやかにリオンに言うと、ヒューゴはそこにいる全員を見回して言う。
「今から情報を集め出発するのは難しいだろう。今日は私の屋敷で身体を休めて行きなさい」
「ありがとうございます、ヒューゴさん」
 申し出を同じようににこやかに受け、はスタンの方を見る。
「んじゃあぼく、今のうちに装備品、整えておくね〜」
「え、それぐらい俺がやるよ?」
「スタンじゃ心配で胃に穴が開く」
「酷っ!」
「…………否定は出来ないわね」
「ルーティまでッ!」
 ひらり、と手を軽く振りながらは一行から離れて一人城下町へと向かった。








後書き